公開: 2024年2月5日
更新: 2024年2月5日
現代日本の教育制度では、高校生が入学した大学で学ぶ知識と、その人が大学を卒業した後に就職した企業で従事する仕事の内容は、直接、つながりません。それは、日本社会では、大学卒業後の社会生活では、仕事に必要な知識・経験は、企業によって教育されることが前提となっているからです。そのため、企業の入社試験は、学生の専門性を強く意識したものではなく、学生の「やる気」や、その企業風土への適合性に焦点を当てたものになっています。
それは、日本社会での雇用制度の基本が、社員の一括採用、終身雇用、年功に基づいた給与の支給、などに沿ったものだからです。これは、入社した社員の仕事が、学生が大学で学んだ知識に関係した者であるとの保証はなく、その企業に必要な仕事を社員に割り当てる方式を採用しているからです。自分が学んだ専門以外の分野の仕事に従事する場合、その仕事に必要な知識は、企業が提供する社内・社外教育によって獲得しなければなりません。このやり方は、日本企業が社員に終身雇用を保証していることと関係しています。
このような背景から、日本の大学生にとっては、どの学部の、どの学科で学ぶか、よりも、どの大学で学んだかが問題になります。つまり、日本の国内で有名な大学で学ぶことは、知られていない大学で学ぶよりも、就職時に有利だからです。それは、専門性や専門知識を問題にされないからです。このことは、日本以外の社会では、ほとんど実施されていない方法です。海外の企業では、専門知識を前提にして、採用すべき人材を決定しています。
日本企業のこの雇用制度は、海外の企業の雇用制度に比較すると、効率が悪く、専門性に低くなる不利があります。このため、最近では、日本企業においても、入社希望者に対して、特定の専門知識の修得を要求する例が出てきています。これは、日本社会では、医学部系の学部学科で導入されている方法です。